地方創生という言葉が叫ばれて久しい昨今、単に「人を呼ぶ」だけの広告ではなく、その土地の「営み」を届けることで、持続可能な関係性を築こうとする試みが注目されている。
群馬県を拠点に、クリエイティブの力で地域の課題解決に挑むCOOTS株式会社。彼らが今回、草津町のプロモーションにおいて選んだのは、東京駅のエスカレーターを縦断する「写真展」という異色の施策だった。
制作の最前線に立つプランナー兼ディレクターの重田氏に、なぜ今「屋外広告(OOH)」だったのか、そして「働く人の循環」というコンセプトに込めた想いを、余すことなく伺った。

COOTS株式会社 プランナー・ディレクター重田 宙 氏
地方から「クリエイティブの力」で、持続可能な地方創生を
―重田さんのこれまでの歩みと、現在の業務について教えてください。
大学卒業後は東京のテレビCM制作会社に入社し、2年ほどキー局のCM制作に携わっていました。その後、2022年に現在のCOOTS株式会社へ入り、今はクリエイティブの企画から制作の実行まで幅広く担当しています。ポジションとしてはプランナー兼ディレクターですが、予算管理や進行管理、動画の撮影ディレクションなど、一気通貫で携わっています。
―「COOTS」の広告業界における立ち位置や強みをどう捉えていますか。
「地方にある、制作能力を持った広告代理店」という点です。東京には同じような機能を持つ会社は多いですが、私たちが地方に拠点を置き、地方のプロジェクトや施策をワンストップで完結できるのは大きな特徴です。営業を専門に置かず、「クリエイティブの力で仕事を取っていく」というスタンスを大切にしています。
現在は草津町をはじめとした群馬県内のお仕事が主ですが、新潟、東京、北陸、甲信越、山梨など、広く関東・近隣県を拠点として活動しています。
―地方創生という文脈では、今どのような課題を感じていますか?
観光客が来ないという悩みもあれば、逆に草津のように人が来すぎて住民の暮らしが圧迫される「オーバーツーリズム」という課題もあります。また、若者が減り、インナー(担い手)が不足すれば、観光そのものが持続できなくなります。
単に「観光客を増やせばいい」というフェーズは終わっていて、広告や映像という手段に捉われず、地域のバランスをどう整えていくか。それが今の私たちのミッションです。
ギャラリーを飛び出し、「働く人の動線」に投げ込む
―今回、草津町の案件で「屋外広告(OOH)」を活用しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
もともとは、都内のギャラリーを借りて写真展を開催する予定でした。しかし、写真展単体では、わざわざ足を運んでくれる人にしか届かない。もっと能動的に、ターゲットの日常の動線にメッセージを投げ込む必要があると感じ、オーマッチに相談しました。
―実施場所に「東京駅」のエスカレーターを選んだ理由を教えてください。
今回のテーマが、草津で働く人々の「日常」と「非日常」だったからです。渋谷や新宿は若者が多いですが、東京駅は新幹線利用者や出張者、サラリーマンが圧倒的に多い。草津に向かう可能性が高い層、そして私たちのメッセージが最も響く「働く人々」が密集する場所として、東京駅が最適だと判断しました。
エスカレーターという媒体を選んだのは、階段を上がっていく中で写真が一つひとつ順番に、だんだんと視界に入ってくる構成が、私たちのやりたかった「写真展」というコンセプトに最も近かったからです。
草津と東京、遠く離れた場所で「支え合う循環」を描く
―クリエイティブの内容も、非常に独創的ですね。
写真家の川辺さんに、草津で働く方々の日常を切り取ってもらいました。川辺さんのこだわりで、照明も使わず、演出も最小限に、「ありのままの働く姿」を写しています。
コピーで特に意識したのは「働く循環」という考え方です。東京で働く人々は誰かを支えるために仕事をしていて、その人々が休む時に、今度は草津で働く人々が彼らをおもてなしで支えている。
距離は遠くても、やっていることや思いは同じ。観光を「非日常」として切り離すのではなく、日常の延長線上にある価値として繋げたかったんです。仕事に対する誇りやポリシーを訴求することで、これから仕事に向かう人や帰宅する人の背中をちょっと押すような内容を目指しました。

制作を加速させる「数値の裏付け」と「事例のひらめき」
―オーマッチをパートナーに選んだ決め手や、助かっているポイントはありますか?
圧倒的な提案の幅とレスポンスの速さですね。地方にいる私たちにとって、都内の媒体知見がある方に寄り添ってもらえるのは非常に心強い。タイトな締め切りの中でも柔軟に媒体社と調整してくださる実行力には助けられています。
また、リーチ数や視認率といった定量データをしっかりと提示していただけるのも大きいですね。定性的な価値が中心の施策であっても、社内やクライアントへ説明する際にはこうした数字が「納得感」のある裏付けになります。
―今後、さらに期待することはありますか。
数字の裏付けに加えて、「他所ではこんな面白い活用をしていた」という具体的な事例をもっともっと知りたいです。
前例があることは、クライアントへの提案や稟議を通してもらうにあたって、大きな武器になりますし、私たち制作側にとっても「そんな使い方ができるなら、こんなクリエイティブもやれるね」とアイデアを広げるきっかけになります。事例をベースに、一緒に面白い「違和感」を作っていけたら嬉しいですね。
「一発かます」か「札束で殴る」か。OOHの勝ち筋
―これまでのマーケティング活動を踏まえ、OOHの可能性をどう見ていますか。
OOHは、PR的な側面や「ナラティブ(物語性)」を盛り込めれば、SNSで大きな広がりを期待できるメディアです。ただ、予算が限られている中で「丸い(無難な)」企画をやっても埋もれてしまいます。
大手が圧倒的な出稿量で「札束で殴る」ようなジャックをするか、あるいは私たちが目指したように、クリエイティブの「質」と「文脈」で一発かますか。
「人に言いたくなる違和感」や「ストーリー」をしっかり作れば、OOHはデジタルと掛け合わさって爆発的な価値を生む。今後も、オーマッチさんと一緒に、そんな面白い仕掛けに挑戦していきたいですね。
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