「広告費をかけない口コミを活用した集客」を強みに圧倒的な成長を遂げてきたオンラインスクール「デイトラ」が、近年、学生街を中心とした駅看板広告という、一見するとその理念に逆行するようなオフライン施策に踏み切った。
オーガニック流入を主戦場としてきた同社が、OOH広告投資を決断した背景には、直接的なコンバージョンだけを追わない広告戦略があった。 事業を推進する伊藤氏に、デイトラ流のオフライン広告戦略の詳細について、詳しく伺った。

株式会社デイトラ 伊藤 氏
デイトラの事業モデル ― なぜ広告に頼らず成長できたのか
ー御社のサービス「デイトラ」について、その特徴から教えていただけますでしょうか。デイトラは、一言で言うと『オンラインで仕事に繋がるWebスキルを学べるサービス』
です。プログラミングやWebデザイン、動画編集などを扱っています 。最大の特徴は価格です。同業他社様ですと30万円から80万円が相場ですが、弊社は全てのサービスを10万円前後で提供しており、圧倒的なコストパフォーマンスを実現しています。
ー なぜその低価格が実現できるのでしょうか。
業界の価格が高い一番の理由は、広告費です。1人のユーザーを獲得するのに10万円、20万円とかかるのが当たり前の世界です 。しかし、弊社は創業以来、広告費をほとんど使わず、SEOやYouTubeといったコンテンツマーケティングと、何より受講生の皆様からの『口コミ』を中心に集客してきました 。良いサービスを体験した方が自然と紹介してくださる。このオーガニックな集客モデルが、私たちの事業の根幹であり、低価格の秘密です 。ですので、今回の駅看板のようなOOH施策は、弊社にとって非常に稀な取り組みと言えます。
ー 広告に頼らない集客戦略は、創業当初から意識されていたのでしょうか。
2020年の創業時から、まずCVに最も近い、購入意欲の高い『顕在層』からアプローチするという方針で進めてきました 。最初は『デイトラに興味がある』という方向けに卒業生のインタビュー記事を増やし、次に『Webスキルを学びたい』という広い層に向けてYouTubeで勉強法の動画などを発信しました 。駅広告のようなOOH施策は、そうした基盤があった上で、さらに広い『潜在層』にアプローチするための、次のステップという位置付けです。
ー 口コミ中心の戦略を取られてきた中で、今回あえて駅広告、特に早稲田駅など学生街を中心に出稿された狙いは何だったのでしょうか。
今回の狙いは、これまで十分にアプローチできていなかった学生や新社会人といった若年層への、早期認知の獲得です 。弊社の現在のメインターゲットは、キャリアチェンジを目指す20代後半から30代半ばの方々です 。あるいは、出産などで一度キャリアが断絶してしまった主婦の方が、再び稼ぐスキルを身につけるために受講されるケースも多いです 。こうした『キャリアの節目』に選ばれることが多いのですが、もっと早い段階、例えば学生のうちにデイトラを知ってもらうことで、将来キャリアに悩んだ時に『そういえばデイトラがあったな』と第一想起してもらえる存在になりたい、という想いがありました。
ー 未来の顧客への種まき、ということですね。
はい。実際に施策を通して、当初仮説としていた大学1、2年生よりも、就職活動を終えた大学4年生の方が『このままではまずい』という危機感から学習意欲が高い、といった新たな発見もありました 。そうした学びを得る意味でも、重要なアプローチでしたね。
また新規集客という側面だけでなく、『ブランディング強化』、特に既存の受講生や講師の方々に向けたインナーブランディングの意味合いも強いです。
ー と言いますと?
ご存知の通り、オンラインスクール業界は、外から見ると少し怪しく見られがちです 。私たちは経産省の認定を受けるなど真っ当に運営していますが、それでも受講生がご家族に受講を相談する時などに、不安を与えてしまうことがあるかもしれません 。そんな時、『駅に看板を出しているちゃんとした会社なんだ』という事実は、物理的な信頼の証になります 。受講生が『私が通っているの、これなんだよ』と家族と会話したり、講師が『デイトラで働いている』と自信を持って言えたりする。その安心感や誇りを醸成することが、大きな狙いの一つでした。
ー OOHの効果は実感されているのでしょうか?
実感することが出来ています。成功の判断基準は、XをはじめとするSNSでの口コミの投稿数や、友人・知人から『渋谷で広告見たよ』と言われる声といった、定性的な“体感”を重視しています。
加えて駅看板は、設置費のかからない2年目以降は費用がほぼ半額になります 。その上で、Web広告と比較しても駅看板のインプレッション単価が非常に安い。このコスト的なメリットがあり、さらにコミュニティの活性化という定性的な価値を生んでくれるのであれば、投資する意味は十分にあると判断しました
クリエイティブ戦略の核心 ― 記憶に残り、行動を促すための仕掛け
ークリエイティブ面ではどのような点を工夫されたのでしょうか。まず、駅看板についてお聞かせください。
駅看板で最も意識したのはコピーです 。具体的には『社会で戦う武器が欲しい学生社会人に選ばれています』といったコピーを掲出しました 。ここには2つの意図があり、1つはターゲットである『学生・社会人』への明確な呼びかけ。もう1つは『就職・独立に役立つ』というベネフィットの強調です 。最終的なゴールは、見た人の記憶に残り、『ITスキルを身に付けて就職や独立をしたいと思った時に、デイトラを想起してもらう』という mental availability(心の想起)のトリガーを作ることでした。
ークリエイティブに「#デイトラで検索」と記載しているのも、何か意図があるのでしょうか。
はい。私たちの最大の強みは、作られていないリアルな口コミです 。サービスサイトに直接誘導するよりも、まずはTwitterで利用者の生の声を見てもらう方が、結果的に売り上げに繋がると考えています 。これはマス広告全般で意識している点で、過去のテレビCMでも同じようにハッシュタグ検索を使いました 。いきなりサイトを見るのはハードルが高くても、ハッシュタグ検索なら気軽に試せるかもしれない、という期待もあります。
ー 一方で、渋谷のビジョン広告では、また違ったアプローチをされたと伺いました。
渋谷でのビジョン広告は駅看板とは全く別の目的と戦略がありました。1つは、「社名をひたすら連呼する」という手法です 。これは、ある記事で『無名な企業はまず名前を覚えてもらうことがCMの役割だ』と読んだのを参考にしました 。『デイトラって知ってる?』という会話が色々な場所で起こっているような『街の噂編』というテーマで、とにかくサービス名を記憶に残すことを狙いました 。
もう1つの大きな目的が、AI活用の実績作りです 。あの動画はAIで制作したのですが、その事実をプレスリリースで発信することで、『デイトラはAIを活用している先進的な企業だ』というブランディングを行い、BtoBの研修事業に繋げる狙いがありました 。実際に広告専門誌から取材を受け、メディア掲載という実績にも繋がっています。

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