メディア担当者インタビュー

登録者2.5倍増! スタートアップ転職『スタクラ』が仕掛けた、Webマーケティングの壁を破るオフライン広告戦略|株式会社スタートアップクラス様

Webマーケティング全盛の現代。多くの企業がCPAやCVRの最適化に心血を注ぐ中、それに逆行するかのような一手で、市場に鮮烈なインパクトを与えた企業がある。スタートアップ特化型転職サービス「スタクラ」を運営する、株式会社スタートアップクラスだ。
https://startupclass.co.jp/

同社は初となるオフライン広告で、大胆なクリエイティブの交通広告を展開。その施策はSNSでも大きな話題となり、結果としてオーガニック経由の新規登録者数を前年同期比2.5倍にまで急増させるという大きな成果を上げた。
なぜ彼らは、効果測定が難しいとされるオフライン広告に、決して少なくない予算を投じる決断をしたのか。その裏には、Webマーケティングに対する強い課題感と、成功を手繰り寄せるための緻密な戦略があった。今回の施策を率いた同社の根岸氏に、その決断の背景から成功の要因までを詳しく伺った。

株式会社スタートアップクラス 根岸やすゆき 氏

「起業家を支える」という揺るぎない事業の核

ーまず初めに、御社が運営する『スタクラ』が、他の転職サービスと根本的に何が違うのか、そのポジショニングからお聞かせください。
私たちのビジョンは、徹頭徹尾『起業家を応援する』ことです。資金調達、事業開発、そして組織づくり。起業家が直面するあらゆる課題の中でも、いつの時代も根幹にあるのは『人』の問題です。
特に、事業を急成長させなければならないアーリーフェーズのスタートアップにとって、即戦力となるCXO候補やコアメンバーとの出会いは、まさに事業の生命線。私たちは、その最もクリティカルな部分で、挑戦する起業家たちの伴走者でありたいと考えています。
ー『起業家を応援したい』という想いは、クライアントをスタートアップに限定している点にも表れていますね。
大変ありがたいことに、大企業やメガベンチャーから掲載依頼をいただくこともあるのですが、全てお断りしています。あくまでも、日本の未来を創るチャレンジャーを支えるという一点に、事業の軸足を置いているからです。

直面した「2つの壁」と危機感

ーそのように独自の立ち位置を確立されてきた中で、今回、大きな投資を伴うオフライン広告に踏み切った背景には、どのような課題があったのでしょうか。
課題は2つ、非常に明確でした。1つ目は、競合サービスに対する圧倒的な知名度の低さです。転職を考えたとき、ビジネスパーソンの頭に第一想起されるのは、やはり大手のサービス。『スタートアップ転職』というニッチな領域ですら、私たちの名前はなかなか挙がってきませんでした。そして、より根深い課題が2つ目です。そもそもスタートアップへの転職を考える人自体が非常に少ないという市場構造がありました。年間300万人の転職者のうち、スタートアップを選ぶのはわずか2万人程度。全体の0.5%しかいないパイを、競合と奪い合っているのが現状でした。
ー2つの課題をクリアするにあたって、「このままではいけない」と感じられていた点はどのようなところがあったのでしょうか。
Web広告は、いわば『スタートアップ 転職』と検索してくれるような、すでに興味を持っている『顕在層』を刈り取る手法です。しかし、それだけでは市場そのものは広がりません。CPAを改善し、CVRを高めても、その先に待っているのはリーチできる層の先細りです。このままではいずれジリ貧になる、という強い危機感がありました。
事業を非連続に成長させるには、転職潜在層、つまりまだ具体的に動いていない大多数のビジネスパーソンから第一想起を取り、そして『スタートアップ』という選択肢を提示する必要があったのです。

なぜオフライン広告だったのか?媒体と掲載場所の選定理由

ーそこで、オフライン広告に踏み切ったのですね。Web広告にはない、どのような効果を期待されたのでしょうか?
オフライン広告の最大の意義は、能動的に情報を探しに来ない層に、自然と情報を届けられることです。特に交通広告は、通勤などで日常的に利用する人々の目に、否が応でも繰り返し触れることになる。
これにより、『すぐに転職は考えていない』という潜在層の頭の中に、『スタートアップといえばスタクラ』という刷り込みができると考えました。これが、第一想起を獲得するための最も有効な手段だと判断したのです。特に転職サービスは『まず検索をして、サイトに流入して深く知ってもらい、登録に至る』という流れとなるため、刈取型ではなく、『検索時において第一想起を取る』ということがビジネスの上でも非常に重要になると考えております。
ー潜在層への刷り込み効果ですね。それ以外にも狙いはありましたか?
はい。パブリックな空間に大規模な広告を出すこと自体が、企業としての『信頼性』と『覚悟』の表明になります。
『我々はこれだけの投資をして、本気でスタートアップ市場を盛り上げようとしている』というメッセージは、採用に悩む起業家と、キャリアに悩むビジネスパーソンの双方に、安心感と期待感を与えることができると考えました。
ーオフライン広告と一言で言っても様々ですが、恵比寿や東京駅といった『掲載場所』は、どのように絞り込んでいったのでしょうか?
まず大前提として、ターゲットである即戦力人材がいそうなエリアに出す、ということに尽きます。その上で、人流データを活用したり、弊社の登録者の勤務地エリアといった自社データを組み合わせたりして、総合的に判断しました。
その結果、多くのビジネスパーソンが行き交う『東京駅』や、IT・スタートアップ企業が集積する『恵比寿』などが選ばれました。また、東急線にも出稿したのですが、これは少し戦略的な意図があります。本来リーチしたい層はメトロ利用者にも多いのですが、メトロ広告はテストマーケティングとしては高すぎた。そこで、メトロへの乗り入れが多い東急線に出稿することで、ターゲット層にリーチしようと考えたのです。
ー掲載場所だけでなく、駅看板や電車内ステッカーといった『媒体』の選定にも理由があったのでしょうか?例えば、タクシー広告なども検討されたかと思います。
「タクシー広告も検討しました。ただ、今回は初めてのオフライン施策で、『何が効いたのか』を正確に検証する必要がありました。タクシー広告は、どんな人がどこで広告を見たのかというデータが追いにくく、効果の検証が難しい。そのため、今回は優先度を下げました。
年間契約で長期間の露出が見込める『駅看板』や、比較的コストを抑えられ、乗客の目に留まりやすい『ツインステッカー』を選びました。そもそも広告なんてあまり見られない、という前提の中で、日常の風景に溶け込み『ふと目に入ってしまう』という偶発的な接触を狙ったのです。特に駅看板は、例えば『この期間に恵比寿駅にだけ広告を出す』というように変数を限定できるため、『恵比寿駅の広告によって、登録がこれだけ増えた』という仮説が立てやすく、施策単体の効果を検証しやすいという明確な利点がありました。
ー通常、こうした施策はWeb広告などと連動させる『クロスメディア戦略』が一般的かと思いますが、今回はあえて単独で実施されたそうですね。
効果検証の純度を高めるため、意図的に他の施策と連動させないようにしました。ノウハウがない中、Web広告の出稿量を変えたり、複数のオフライン広告を同時に走らせたりすると、結局何が要因で成果が出たのか分からなくなってしまいます。
そのため今回は、あえてWebマーケとの連動を避け、オフライン施策単体で動かしたのです。この『何が効いたのかを正確に把握する』というこだわりが、後の成果分析に繋がっていきます。

クリエイティブ戦略の核心。ターゲットを絞り込む「割り切り」

ー今回の広告は、そのクリエイティブも大きな話題を呼びました。一度見たら忘れられないインパクトがありましたが、どのような戦略があったのでしょうか。
「限られた予算の中で成果を最大化するために、私たちが立てた方程式は『成果 = クリエイティブ力 × 出稿量』です。そこで目指したのは、究極のターゲティングでした。
ーターゲットを絞り込む、と。具体的にはどういうことでしょう。
あえて挑発的で強いメッセージを打ち出すことで、現状に満足せず、より挑戦的な環境を求める優秀な人材の心に直接響かせようと考えました。
万人受けする心地よいメッセージでは、その他大勢の広告に埋もれてしまいます。このメッセージにドキッとするくらいの人でなければ、変化の激しいスタートアップの環境にはフィットしないかもしれない。本当に届けたい人にだけ届けばいい。その割り切りが、今回のクリエイティブの核です。

施策の成果を可視化する、独自の評価軸

ー今回の施策で、成果は具体的にどのくらい現れたのでしょうか。
私たちも驚くほど明確な成果が出ました。出稿直後のピーク時には、オーガニック経由の新規登録者数が前年同期比で7〜9倍にまで跳ね上がりました。もちろん、それは短期的なインパクトですが、施策が落ち着いた後も平均して2.5倍という高い水準で下げ止まっており、明らかに事業全体のベースが引き上がったと判断しています。
ー素晴らしい成果ですね。短期的なインパクトだけでなく、事業の底上げにも繋がったと。この成功を、どのように評価・分析されているのでしょうか。
マーケターとして、施策の事業貢献度を説明する責任があります。そこで私たちは、施策開始前に評価の軸を明確に定めていました。具体的には、『今回の施策で増えたオーガニック登録者数を、もしWeb広告で獲得していたらいくらかかったか』という広告費に換算する、という評価方法です。web広告の獲得単価の上昇傾向も踏まえて、事前にweb広告において登録者数を増やした際の想定費用のシュミレーションも行っていました。
ー感覚論に陥りがちなオフライン施策の効果を、明確にROI(投資利益率)として可視化したわけですね。
はい。この評価軸を事前に決めていたからこそ、効果検証の純度を高めるために、あえてWeb広告の出稿量を変えずに単独で実施するという『実験的』なアプローチを取れましたし、社内に対しても投資の妥当性を明確に説明できました。数字とロジックに基づいた再現性のある成果だと考えています。
ー 最後に、今後の事業展開についてお聞かせください。
私たちのビジョンはあくまで『起業家を支援する』ことなので、その軸はぶれません 。起業家が直面する課題は『人』が最も大きいですが、それだけではありません 。例えば、事業が成長する過程で生まれる組織課題の解決や、バイアウトか上場かといったイグジット戦略の支援 。さらには、孤独を感じがちな起業家のためのメンタルヘルスケアなど、人材マッチングの枠を超えて、挑戦する人々を多角的に支える事業を展開していきたいと考えています 。まだ構想段階ではありますが、私たち自身もスタートアップとして成長を経験することで、より説得力のあるソリューションを提供できると信じています 。

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